書くことが好きになる作文教室20241016~こんな手紙を書きました。
「山の装いが美しい季節になりましたね。
元気に学校へ行っていますか?
作文教室の先生で、ノンフィクション作家の神山典士です。よろしくお願いします。
お母さんにはいつもお仕事でお世話になっています。
お母さんから、Rちゃんがアメリカ留学を目指して書いた作文を見せてもらいました。
とても素晴らしい文章でびっくりしました。本をたくさん読んでいるのかな? しっかりとRちゃんの主張が伝わる文章です。
でも残念ながら結果は落選だと聞きました。それはとても残念ですが、なぜ落選してしまったのか?それを考えてみましょう。
まずRちゃんはこの作品を「読む人」のことをイメージしましたか?
何歳くらいの人?男性?女性?どんな仕事をしている人?
なによりも、その人はどんな作文を期待していたでしょうか?
作文は(いや、作文だけでなく歌でも絵でも詩でもダンスでも)それを読む人、見る人、聴く人、感じる人(受け手)がどんな人なのか?なにを欲しているのか?それをイメージすることが大切です。
自分の意見や表現を大切にしながらも、受け手にそれをわかりやすく伝えること。「そうそう」と共感してもらえること。「それは大切だ」と納得してもらえること。
そういう観点から今回の作品を見ると、どうでしょうか?
今回の作品で、Rちゃんがいじめにあっていたことを跳ね返して「人と違っていいんだ」という意識に目覚め、「多様性の国アメリカにいきたい」という希望をいだいたことは読者にわかりやすく伝わっています。
でも残念なのは(これはあくまでも神山の印象ですが)、その夢が「インフルエンサー」であることか? そこがいま一つ審査員の共感を得られなかったのでは? と感じました。
インフルエンサーは、自分で表現するというよりも、誰かの表現を多くの人に広める役割です。苦しんでもがいて何かを生み出して表現するアーティストのような「本質的な重さ」がない(と、感じる人もいる)。とくに年配の人が審査員だった場合、(ぼくは64歳ですが)インフルエンサーのことはよくわからない(可能性がある)。
Rちゃんにとっては、自分を「いじめ」から助けてくれたのはネットの世界だから、インフルエンサーは素敵な職業なんだろうと思います。けれど、大人の世界ではその存在は少し違ってとらえられているかもしれない。
そこがポイントだったかな? と神山は感じました。
Rちゃんはこれから、もっともっと広い世界を見ることになります。ネットの中だけでなくリアルな社会でもいろいろな職業があり、いろいろな夢があり、いろいろな生き方があります。それらに出会って、驚いたり笑ったり泣いたりしながら、自分の生きる道を探してみてください。それでもインフルエンサーがいいならば、その先には「世界的なインフルエンサーになる」という夢も広がるでしょう。
一つの道は誰かが拓くもの。いま大勢の若者が活躍しているアメリカの大リーグにも、最初は野球界全てに反対されながらドジャーズに入った野茂英雄選手がいました。野茂選手が活躍して道を拓いたから大谷翔平選手も生まれたのです。サッカーではカズ選手が道を拓きました。バスケットでは田臥選手がいた。
それを思うと、「インフルエンサーにはRちゃんがいた」、と言われる日がくるか?も? ふふふ、がんばってくださいね。
一度先生の作文教室にきてみませんか?豊島区でやっています。
冬休みにはトカイナカハウスで作文合宿もやります。美味しい野菜を食べて美しい星空を見て手漉き和紙をつくったり座禅をしたりもします。ぜひ参加してください。
テキストを送ります。この本の中には、アメリカでひとりぼっちでホームステイした14歳のぼくがいます。この作文が64歳のぼくの支えです。この作文があるからいまのぼくがある。読んでみてくださいね。それと小学5年生の「内閣総理大臣賞」、風美ちゃんの作品も。素晴らしいよ。
では、良き日々を。
ご両親によろしくね。
神山典士